2020年「水銀(石英式)オゾン灯」が販売停止になります。

オゾンを発生させる方法はいくつかありますが、その中の「水銀を使ったオゾンランプ」が環境や安全の配慮から2020年をもって世界レベルでの生産終了するというニュースがありました。日本でも古くは水銀灯、白熱灯、オゾン発生装置でいうなら石英式ランプ照射型は広く活用されてきました。しかし昨今の重金属などの土壌汚染やco2問題、有害性など健康被害の懸念からも生産終了の申し合わせは来るべくしてしかりの時代なのかも知れません。今日はその界隈の話題とオゾン発生装置の話題をお届けいたします。

2020年・石英式オゾンランプ生産終了は「2013年の水銀条約」に世界が動いた結果

特に深刻な発端だったのは発展途上国における水銀や水銀化合物による河川や土壌汚染が原因による公害病の深刻さでした。実はこの条約を先導したのは日本です。過去から現在も患者認定の訴訟中である「水俣病」が国家問題である経緯があったためです。有害窒素の悪態の垂れ流しとして今でも公害病の尾を引きずっているのです。2013年より日本が積極的に条約締結を推し進め、同年10月10日に熊本県で「水銀条約」は採択されました。

どのような経緯でオゾンランプが生産終了になるのか?

この条約での肝は「水銀、水銀製品の輸出入を国際条約により制限する」というものです。同意、承認加盟国は50か国以上ですが未加盟国はエントリーしていません。しかし水銀、水銀製品の産出、輸出入の主要国も多く一斉に「過剰な水銀」を激減できる体制はこれで整えられました。具体的に私たちの身近なところでの水銀削減(とそれに付随する条約では)ディーゼル車から出る排ガスのオキシダントでもある高濃度オゾン、家庭製品で水銀が使われているのは「白熱灯」「蛍光灯」「乾電池」。今はもう見かけないですが「体温計」の計測液にも使われていました。

そして水銀製品の一つが「オゾン照射ランプ(UVランプ)」なのです。また、さらに輪をかけて不味いのが「オゾンに窒素」です。水銀公害の水俣病で窒素ガスが引き合いに出されている(実際訴えられている会社もチッソという名称ですが)のは水銀と関わりがある気体だからです。オゾン発生にはまず「純粋な酸素」が必要です。ところがこれに窒素を添加するとオゾン発生量が劇的に増加するのです。からくりは窒素により電気が通りやすくなり電位活動が盛んになるから。これが環境問題のディーゼル排ガスでも出てくる「悪い方向のオゾン」なのです。

[注釈1]
ディーゼル車のオキシダント問題は水銀削減ではないのですが、「水銀に関する水俣条約(水銀条約)のなかの化石燃料に対する規制」で出典。この条約は全35条の条文と5つの附属書からなり、水銀のライフサイクル全体が規制されるというものです。語弊が生じるのでディーゼル車の部分に追加してお読みください。
*条約に関する記述部分参照:「水銀に関する水俣条約」より

オゾンを発生させる方法

オゾンを発生させる方法はいくつかあります。
以下に紹介します。

水銀をつかった放電式紫外線ランプ

今回生産終了になるのはこのタイプです。
天然のオゾンが発生する放電現象の過程を模して作られているオゾン発生ランプです。具体的には石英ガラス管内に水銀蒸気を流してアルゴンガスとぶつかることでオゾンを発生させます。ちなみにランプ表面は石英という鉱石が原料ですが、全く歯が立たないというくらいUV線(オゾン発生領域を含むUV-C波)に強いです。なので発生した殺菌線を吸収することなく照射できるというわけです。ガラスだと吸ってしまうそうで昔は苦肉の策で管にフッ素で加工されていたのですがイマイチだったようです。*参考参照:以前のUVランプ記事に分かりやすい図表を添付してあります。

主な用途としては、寺社のご神水、手洗い場などの湧水殺菌、調理器具殺菌保管庫、養殖場など漁港の海水リサイクルなど。インライン方式とオープン(開放型)方式があります。

無声放電方式オゾナイザー

広範囲に適応できる酸素分解で得られるオゾン。
管内に、別に発生させた純度の高い酸素を送り、管を挟んだ電極から高電圧放電してO3(オゾン)の結合を作り出すという機器です。
オゾン発生器などと呼ばれています。
豪雨の時の落雷と雷鳴のようなものです。でも送った酸素が全部オゾンにはなりません。酸素オゾンン混合ガスとなり放出されます。先ほど「ガラスは役立たず」という感じで言ってしまいましたが、管と高圧電流を流す伝導板の間にはガラスが必須です。
なぜかというと「無かったら目潰しレベルの閃光花火と耳をつんざく爆音が止まらないからです」これは自然界の祟りではないので閃光に手のひらを合わせ、まぶたを閉じてお祈りしてもお怒りは治まりません。オゾンができるまでお祈りを捧げても無駄ですからね、オゾナイザーを自作するかたは注意してください。

主な用途としては、冷蔵庫の殺菌機能、消臭、脱臭機器、トイレ消臭など小規模向きから浄水場まで幅広く利用されています。

水中放電により電解水としてオゾン水を作り出す方式

オゾン処理水を作り出してから別の貯水槽に添加してオゾンを活用するタイプと直接水中でオゾンを発生させる方法があります。

超純水は電気を全く通しません(この状態を不導体、又は絶縁体という)ですが、水に電極を作り電位を起こすならば、これに適当な「電気が流れるような物質」を溶かす必要があります。しかしながら何でもいいわけでもなく銅、樹脂とか紙くずみたいな不純物ではその後の使用も含め困る訳です。なのでいわゆる残留しても有害ではない、その後の使用用途でも困らないイオンになりそうなものを水中に溶かすのです。よく使われているのは電気抵抗の授業の実験で定番だった食塩水、硫酸銅などですが、オゾンに塩素は酸化が早すぎ(加速しすぎ)という弱点があります。(但し働きも弱めますが、ダメではない、という別の手法を用いたオゾン発生に関する論述もあります)大抵のセオリーとしては、薬品や物質の溶液ではなく「個体分子膜」という膜を用いてこの電解質媒体からイオン交換を促すことでオゾンを発生させます。

【主な使用先】
直接オゾンを作り出す:水道局の浄水場、下水処理場(但し、オゾンガスを無声放電式で発生させ水中にバブリングする設備もある)
オゾン水を希釈、タンク注入:人工透析の透析液、酸化療法(オゾン療法含む)

オゾン発生方法別比較表

ご存じの通りオゾン発生装置はコンパクトな壁掛けランプから、建造物へのビルドイン、浄水場の巨大濾過水槽まで規模が様々です。ので比べられないのですが、比較はあくまでも部品の調達の利便性や量産面でのコスト、濃度は1ppm(作業の限度基準)までのオゾンの発生又は生成、分解速度はphと温度が同じだった場合の比較です。

殺菌基準までの発生濃度 分解速度 耐久性 コスト
紫外線・水銀ランプ
ただし蛍光灯表面が曇ると激減
◯〜△
湿気に触れなければという条件付き

量産されコンパクトな商品が多い。
放電式・電磁波プレート
低音に弱い

部品、電気代が高い。小規模向き。
電解水処理
必ず溶液水槽

ナノレベルバブリングが必須条件

オゾン処理水をインジェクトで注入

常に酸化促進されている状態なので腐食は免れない
◯〜△
大型付帯設備の場合、大抵が見積もりオーダーメイド

まとめ〜次世代無水銀ランプも市販で登場しています

次世代無水銀ランプとは、簡潔に言えば「水銀0のオゾンランプ」です。無水銀オゾンランプとして市販されている内訳は、どうも電極放電式の凄いやつのようです。オゾンをさらに活性させて酸化アタックします。

昨今の化学物質過敏症について

香水だけではなく、消臭剤や芳香剤、柔軟剤など、好きな香りは疲れた心を癒し、気分を高め、今を生きる活力となるもの。しかし香りに含まれる化学物質により、化学物質過敏症という健康被害に苦しめられている人がいる。化学物質過敏症は、周囲に理解されにくく、単なる香りの好き嫌いだと片づけられてしまいがちである。化学物質過敏症に悩む当事者でさえ、健康被害が生じる原因や対策が分からず、辛い思いをしていることも少なくない。そこで今回は、周囲の臭い(外的要因)により体調不良になっている人が化学物質過敏症という症状にたどり着いた方や、化学物質過敏症の原因や対策を知りたいと考えている人に向けて書きたいと思う。

化学物質過敏症

まず化学物質過敏症について知らない人もいると思うため、化学物質過敏症について簡単にまとめる。

化学物質過敏症とは

化学物質過敏症とは、香りに含まれる化学物質に身体が反応して健康被害が生じる病気のことでである。発症してしまうと、たとえ微量の化学物質であっても、様々な体調不良を引き起こす。
また、化学物質過敏症は突然発症することがある。化学物質を浴び続けたことにより、ある日許容量を超えてしまい発症してしまう。一度でも発症すると、次々と他の化学物質にも身体が過剰に反応するようになる。症状が悪化して外出すら困難になる人もいるほど、深刻な問題と言える。
調査によると、化学物質過敏症の発症者は全国で約70万人にのぼる。皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思うが、シックハウス症候群も化学物質過敏症のひとつだと言われている。

身体が反応するという点では、化学物質過敏症はアレルギーと似ているかもしれない。しかし、化学物質過敏症とアレルギーは仕組みが異なる。アレルギーは身体を守るための免疫反応が過剰に働いたことで症状が現れるが、化学物質過敏症は自律神経系の症状のため、血液検査をしても異常が出にくい。女性は、更年期障害と診断されることも少なくない。

化学物質過敏症の原因

なぜ香りによって健康被害が生じるのかという原因は判明していない。
化学物質過敏症を発症する引き金となりうるのは、香水や柔軟剤、芳香剤といったものから、タバコの臭いまで様々。人によって症状が現れる原因となる物質が違うため、身体が拒絶しているものを断定することは難しい。

化学物質過敏症の症状

化学物質過敏症の症状は頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、肩こり、倦怠感、不眠、呼吸困難など、人によって異なる。柔軟剤を使用していたことが原因で、湿疹が出るケースもある。
このように、化学物質過敏症は特定の箇所ではなく、全身症状として身体の至る所に現れます。

化学物質過敏症の対策

化学物質過敏症の原因や症状が人によって異なるように、対策もそれぞれ異なる。残念ながら、化学物質過敏症が瞬時に治る魔法のような対策はないのが現状だが、症状を軽くする方法はある。いくつか試し、自分に合った方法を見つけるのが最適かと思われる。

空気の入れ替えを徹底する

窓を開けたり、換気扇や空気清浄器を使うなどして、空気中に含まれる化学物質を排除する。ただし、近隣の住人が使用する柔軟剤の香りによって健康被害が生じる場合もあるので個々の状況に応じて試してみる必要がある。
換気以外にも、備長炭もおすすめできるだろう。備長炭は脱臭だけではなく、化学物質を吸着する効果が期待できるからである。定期的に交換をしながら使用することをおすすめする。

適度な運動をして汗をかく

適度な運動をして、汗をかくことをおすすめする。化学物質は体内に蓄積されてしまうが、汗をかくと排出されやすくなる。サウナで汗をかくのも、化学物質を排出するための有効な手段であるといえる。また、適度な運動は自律神経を整える効果もあるため、日常的に身体を動かすようにすべきである。

オゾン発生器

化学物質過敏症に悩んでいるのであれば、オゾン発生器を使用するのも方法のひとつである。
オゾン発生器は強力な除菌・消臭効果があるため、多くの企業で使用されている。企業で使用されているのは業務用だが、近年では家庭用のオゾン発生器も多く販売されている。
しかし、オゾン発生器は必ずしも安全とは言えず、危険な一面もある。日本産業衛生学会によるとオゾンの許容濃度は0.1ppm。濃度が濃くなるほど、身体に害となるため、少なからずオゾンの特性を理解したうえで安全に使用する必要があるだろう。

企業で使用する業務用のオゾン発生器のオゾンはオゾン発生量も多量なため、室内空間のオゾン濃度も高くなり、人やペットがいない無人環境下で使用するものである。人やペットがいる環境下で業務用のオゾン発生器を使用してしまうと、濃度が高すぎて大変危険である。また、家庭用と謳っていても中には許容濃度を超すオゾン発生器も販売されているため、購入するときはメーカーの注意喚起によく目を通すなどして、信頼できるメーカーや製品を自己責任で選ぶ必要がある。

このように、危険な面もあるオゾンだが、エアコンや冷蔵庫、空気清浄器などにも使われていて実は身近なものでもある。使用方法に気をつければ高い消臭・脱臭効果が期待できるので、検討してみるといいだろう。

周囲に理解を求める

香りによる健康被害について、周囲に理解を求めるべきだろう。化学物質過敏症の当事者だけでは、対策に限界がある。室内を清潔に保ち、換気や空気清浄器を使って空気中に含まれる化学物質を排除しても、来客者や近所の人たちが使用する香り製品や勤務先での香害に悩まされる人が多いことが分かっている。
化学物質過敏症の全てを理解してもらうのは難しいかもしれないが、香りによる健康被害について伝えることも必要である。

専門病院に相談する

化学物質過敏症の症状がひどければ、専門病院に相談することをおすすめする。残念ながら令和元年現在、特効薬はないが、症状を軽減させたり、専門医からのアドバイスによって日常生活で生じる負担を軽減させることができる。
一人で悩まず、1度受診してみてはいかがでしょうか。

まとめ

化学物質過敏症とは、香りに含まれる化学物質に対し身体が拒絶反応を示し、全身に様々な症状が現れる病気ことである。現段階では、明確な原因や仕組みは判明しておらず、柔軟剤や芳香剤、タバコの臭いなど人によって拒絶反応を示すものは異なる。
症状を軽くするためには、換気をして空気中に含まれる化学物質を排除すること、汗をかいて排出すること。オゾン発生器を使用するなどの方法がある。もし症状が重いようであれば、専門病院を受診することをおすすめする。今の世の中には香りが強調される製品が溢れている。残念ながら化学物質過敏症は、現状ではあまり認知されていないので、周囲から理解されにくい病気であるといえるだろう。香りで癒し効果を得る人がいる反面、香りが香害として様々な症状に苦しめられている人がいることを理解しなければならない。

オゾン水とこれからの農業

20世紀は化学合成農薬を用いて農業の集約化・効率化が推し進められた時代でした。しかし残留農薬による副作用や環境汚染の問題が広まり、現在では環境コストを考慮した持続可能な農業が求められるようになっています。

有機農業は持続可能な農業の理想型の一つですが、日本および世界の人口や消費・ビジネスの動態に照らせば効率性の面で問題があり、今のところ一種の嗜好品ビジネスにとどまっている感があります。効率性を持続可能性と両立させていくことが21世紀の農業の目標と言えます。

そんな中で注目されているのがオゾン水の活用です。オゾンは強力な防除作用を有する一方で放っておいても酸素に分解してしまうという性質があり、これからの農業にとって非常に有望な存在です。オゾンを農業に適用する試みはすでに長い歴史がありますが、技術の進展により効率的で安全な使用が可能となり、市販機器も豊富になってきたことで、オゾン活用の本格的な普及が始まっています。

この記事では農業に役立つオゾンの性質をわかりやすく解説し、農業にオゾンを導入した事例を紹介していきます。「最近オゾンという言葉をよく聞くが、本当に使えるのだろうか?」と「まゆつば」に感じておられる方も多いかもしれません。基本的な点を理解し実際の導入例を検討することで、オゾン活用のイメージが明瞭になることと思います。

オゾンと従来の農薬の違い

農業だけでなく医療や食品加工など幅広い分野でオゾンが注目されているのは、従来の薬剤とは正反対とも言えるユニークな性質を持っているためです。ここではとくに農業利用を念頭に置き、従来の農薬と対比させながらオゾンの性質を解説します。

作物や環境中に残留しない

DDTを初めとする古典的な化学合成農薬は手軽に広範囲の害虫・病原体を排除することを目的として開発されたもので、次のような特徴がありました(※1)。

(1)自然界には存在しない有機化合物を主成分としている
(2)化学的に安定で、散布後長時間にわたり効果を発揮する

これらの特徴は裏を返せば副作用の危険と残留性そのものを表しています。農薬開発はより安全な薬剤を求めて自然界に存在する化合物やそれに近い合成物を用いる方向へシフトしていき、国際機関や政府により農薬への規制が重ねられていくことになります。

農薬の残留物は生物に直接作用するだけでなく、オゾン層破壊という地球規模の問題につながる場合もあります。臭化メチルは自然界にも存在する化合物で、多種類の病害虫に対し有効な上に副作用が少なく安全性が高かったため広く利用されてきましたが、モントリオール議定書でオゾン層破壊物質に指定され、現在では生産・使用ともに全廃されています(※2)。

一方、オゾンは地表でも低濃度で存在し(※3)、非常に不安定な分子であるため通常の環境では自然に酸素に分解してしまいます(※4)。適切な濃度で用いれば病原体への殺菌力を示したのち速やかに無害な酸素へと変化するため、残留性のない農薬として使用できるのです。

農林水産省が定めた特定農薬(人畜などへの安全性が明らかな農薬)のなかに次亜塩素酸水という物質があり、農業や食品加工の現場でも広く用いられていますが、多くの場合使殺菌後に大量の水で洗い流す必要があります。オゾンは放っておいてもすぐに分解してしまうためこの手間も不要です。

酸化力が強く、ほぼすべての細菌・ウイルスに効く

オゾンは非常に強い酸化力を持っています。殺菌剤に広く用いられている塩素よりも強く、通常見られる物質のなかではフッ素に次いで二番目の強さです(※4)。したがって高濃度では人間や動植物にも有害ですが、適切な濃度に設定することで病原体にだけ効果を発揮するようにすることができます。

また、抗菌剤・防かび剤・抗ウイルス剤は選択毒であり、特定の範囲の細菌・カビ・ウイルスにしか効果を持たないため、用途に応じて多数の薬剤を使い分ける必要がありますが、オゾンは強い酸化力で相手を選ばずに攻撃し、ほとんどすべての細菌・カビ・ウイルスに対し効果を発揮します。

薬剤耐性菌を生まない

微生物は人間などと比べて増殖速度が桁違いに速く、その分だけ突然変異の起こる頻度も多くなります。それまで特定の薬剤で殺されていた微生物がその薬剤への耐性(抵抗性)を身につければ生存に非常に有利になるため、突然変異で生じた薬剤耐性はまたたく間に近隣の同種に広まり、感染症の蔓延を引き起こします。それを予防するには作用性の異なる複数の殺菌剤をローテーションで使用するといった対処が必要です(※5)。

殺菌剤は特定の部位に狙いを定めたワンポイント攻撃で微生物を殺すため、その一箇所が突然変異で変われば薬剤耐性が生まれてしまう可能性があります。一方、オゾンは強い酸化力で微生物の体に多方面から攻撃を仕掛けるため(※6)、オゾンに耐性のある微生物というのは非常に生まれにくいのです。

残留農薬を除去する効果も

オゾンが有機化合物を分解する作用を持つことは古くから知られています。農薬の多くは有機化合物であるため、農産物の出荷前にオゾンで処理することにより残留農薬削減の効果が期待できます。塩素も同様の効能を持ちますが、オゾンの方が分解できる農薬の数が多いという研究結果があります(※7)。また、上述の通りオゾンならば洗い流す必要がありません。

ランニングコストが低い

オゾンを発生させるために必要なのは発生器と水と電源だけです。選択毒性の殺菌剤などは対象に応じて数多く用意しておかねばならず、保管のための場所・管理費もいります。塩素系殺菌剤は購入費・管理費とともに大量のすすぎ水のための水道代が必要になります。

次亜塩素酸水はオゾンと同様に電気を用いて装置で発生させるもので、材料は水と塩です。したがって塩の購入費・管理費が必要です。また、使用法によっては大量の水ですすがなくてはなりません。

殺菌剤や次亜塩素酸水に比べ、トータルのランニングコストはオゾン殺菌のほうがかなり安上がりな場合が多いと言えます。

オゾン水の活用例

オゾンは残留性がないとは言え、殺菌などで比較的高濃度のオゾンを用いる際にはオゾンが意図しない空間に逃げることを防止する必要があります。オゾンをガス状で用いるよりも水に溶解した状態のオゾン水として用いる方が扱いやすいという利点があり、また、オゾンガスよりもオゾン水のほうが殺菌作用が強くなる傾向もあります(※4)。

そこで、オゾン水を農業に導入した事例についてここでは紹介することにします。概ね栽培から出荷までの流れに沿って見ていきます。

オゾンやオゾン水をより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧下さい。
オゾンとオゾン水

資材の殺菌

育苗用のトレイ・支柱など繰り返し使用する器具や、養液栽培の栽培ベッド・培養液タンク・パイプラインといった設備は消毒が不可欠です。消毒にはケミクロンG(次亜塩素酸カルシウム剤)などの塩素系消毒剤やホルマリンがよく用いられますが、これらを使用した後には洗浄が必要で、洗浄が不十分だと作物に発芽障害や生育遅延を引き起こします(※8)。また、廃液の処理も問題となります。

研究によると3~5 ppmのオゾン水で15~30秒間洗浄を行うことで資材を十分に殺菌でき、使用後にすすぎ洗浄をしなくても発芽率が低下することはありません(※8)。廃液処理の問題もありません。

種子の殺菌

種子や球根の病原菌は表面に付着している場合(付着型)と内部に深く侵入している場合(侵入型)とがあり、消毒には熱処理、有機殺菌剤、塩素系消毒剤などが用いられてきました。この中では熱処理がもっとも安定した殺菌効果を持ち、唯一侵入型にも対応できますが、処理温度の管理が難しく、発芽に悪影響を与えるリスクがあります。薬剤を用いる際には耐性菌発生を避けるための処置が必要で、廃液処理という問題もあります(※9)。

水稲種子の病原菌(馬鹿苗病菌・もみ枯細菌・いもち病菌など)に対するオゾン水の殺菌効果を調べた実験(※9)では、0.8~2.5 ppm程度のオゾン水により短時間で病原菌が殺菌されました。ただしこれは菌そのものを攻撃した場合です。

菌が種子に感染した状態では、種子表面の毛に付着した多数の気泡に妨げられてオゾン水が菌に近づけず、そのままでは殺菌効果を持ちませんが、真空ポンプによる脱気処理をした上で2.5~5 ppmのオゾン水に5分間浸すことで付着型病原菌の殺菌が可能となりました。また、この処理によって種子の発芽率と発芽状態は悪化しないことが確かめられています。

養液栽培での殺菌・不純物除去

養液栽培では病原菌の拡散が容易で、根と病原菌の接触機会も多く、溶液中で病害が蔓延しやすい傾向があります(※10)。とくに培養液を循環させる方式ではそのリスクが高まります。

再利用する養液をオゾン水生成装置に取り込み、養液にオゾンを溶解させて殺菌を行った上でタンクに戻すというシステムが開発され、実験で効力が確かめられており(※11)、同タイプの設備はすでにさまざまな現場で実用化されています。また、ごく低濃度のオゾン水であれば作物の生長を阻害することはない(※10)ため、オゾンを含んだ養液を栽培ベッドに供給するという方式も行われています。

培養液に用いる水には作物の生長を阻害する不純物が含まれている場合があり、予めそれらを除去・分解しておくことが重要ですが、オゾン水は病原体に限らず広く有機物を分解する作用を持つため、用水浄化に利用されています。

散布による防除

植物の地上部に低濃度オゾン水を散布すればうどんこ病などの病害の予防が図れることが明らかになっています(※12)。適切な濃度であれば土壌微生物への影響もなく、人畜に無害で散布器具の洗浄も不要であるため、次亜塩素酸水以上に「水まき感覚」で防除に利用することができます。

収穫後の洗浄・農薬除去

収穫した作物やカット野菜のオゾン水による消毒も広く行われています(※10)。次亜塩素酸水と比べても、殺菌力・安全性・ランニングコストの各面でオゾン水は優れていると言えます。

上述の通りオゾンには農薬を分解する作用もあるため、農薬を利用して栽培した作物について収穫後にオゾン水による残留農薬除去を図ることもできます。農薬の中にはオゾン単独では十分に分解されないものがありますが、適宜他物質を併用することで大きな効果を得ることが可能です(※13)。また、農薬によってはオゾンとの反応で有害物質が生成する場合があり、高濃度の農薬を処理する場合には注意が必要です。農薬分解促進と有害物質生成抑止を両立させるシステムの開発も行われています(※14)。

植物工場

植物工場は現在盛んに研究開発が行われ今後の進展が期待されています。植物工場では工場という性質からしてオゾン水の生成・管理が容易であるため、幅広い活用が見込まれています。

まとめ

これからの農業では残留性のある農薬を避け環境コストの低い方法で防除を行うことが基本的な目標となります。これに向けてさまざまな物質と方法が研究され開発されている中で、防除力と安全性を両立するユニークな性質を持つ物質として注目されているのがオゾンです。

農業でオゾンが活用可能な場面は多岐にわたりますが、多数の研究者・開発企業によって各々の現場に適したオゾン処理法の研究が進み、オゾンを効率よく病原体に接触させる技術や安全な管理を図る方法なども考案されたことで、オゾン活用はすでに幅広い実用化の段階に入っています。

上に見たように、栽培の出発点から収穫物の出荷や加工にいたるまでの各段階でオゾンは活用されています。オゾン水は殺菌力と残留性のなさで優れているだけでなく、比較的管理しやすく、ランニングコストが低いのも利点です。大規模なシステムから小規模の栽培施設・農場まで、多様なニーズに応える柔軟性を有しており、農業経営の実態に合わせて導入していくことができます。有機農業との両立も可能です。

各々の農家・農業経営者が自ら進んで持続可能な農業に取り組んでいくことによってこそ未来の豊かな農業は形作られていきます。オゾン水などの新しい方法を率先して取り入れていくことは、経営力を高め商品の差別化を図る上でも有望な選択肢と言えるでしょう。

■引用元
※1)「これからの農薬開発について」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/32/2/32_2_77/_pdf
※2)グリーンジャパン「臭化メチル削減計画とは」
http://www.greenjapan.co.jp/shyuka_substitute.htm
※3)気象庁「地上オゾン」
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/o3_trend.html
※4)日集中医誌2000 年 7 巻 1 号「オゾン水の殺菌効果と院内感染予防への応用」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf
※5)住友化学園芸「殺菌剤の作用性とローテーション散布の重要性」
https://www.sc-engei.co.jp/myroses/dispersal/1.html
※6)筑波物質情報研究所「オゾンによる殺菌機構」
http://www.jcam-net.jp/data/pdf/06016.pdf
※7)水中農薬の塩素およびオゾンによる分解について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/15/1/15_1_62/_pdf
※8)日本医療オゾン研究会会報「農業におけるオゾンの利用(3) オゾン水による農業資材の殺菌と水耕栽培への利用」
http://www.js-mhu-ozone.com/report-review/pdf/g1/gp001-016.pdf
※9)日本医療オゾン研究会会報「農業におけるオゾンの利用(1) オゾン殺菌効果とオゾンによる水稲種子などの殺菌」
http://www.js-mhu-ozone.com/report-review/pdf/g1/gp001-014.pdf
※10)農業機械学会誌「養液内病原菌のオゾンによる殺菌」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsam1937/55/3/55_3_105/_pdf/-char/ja
※11)農研機構「オゾン水を利用したロックウール栽培トマトの養液殺菌システム」
http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto22/11/22_11_08.html
※12)日本食品工業会誌「新しい展開に入ったオゾン水の利用技術」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/2/3/2_3_103/_pdf/-char/ja
※13)「ゴルフ場使用農薬による環境汚染防止に関する研究(第1報) 水溶性農薬のオゾン処理による分解」
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/Kankobutsu/Shoho/annual41/shoho410306.pdf
※14)富士電機「オゾン処理における臭素酸イオン生成を抑制するためのオゾン注入制御システム」
https://www.fujielectric.co.jp/about/company/jihou_2001/pdf/74-08/04.pdf