オゾンは、「オゾン層破壊による地球環境悪化」という環境問題とのからみで有名になったガス成分です。オゾン層は、地上はるかかなたにある雲のようなもので、我々の生活とは無関係のように思えます。しかし、私たちの生活の中では、オゾンが持つ強い酸化力が色々な所で利用されています。

オゾンを溶かし込んだ水をオゾン水と呼びますが、ここでは、オゾンやオゾン水の利用範囲や健康・美容との関係について紹介します。

オゾン

オゾンとは

オゾンとは「O3」と言う化学式で表される、酸素(化学式の中の「O」)が3つ結合してできている酸素の親戚のような物質で、空気中にもごくわずかに存在しています。オゾンには強い酸化力*があるため、細菌を殺す力があり、この力を利用して、殺菌、除菌、脱臭用に使われます。

オゾンガスは人工的に作れますが、気体のままでは使いにくいため、オゾン水としての利用が多いです。オゾンは極めて不安定な物質のため、いったん作られたオゾンは、そのまま放置しておくと酸素に戻ってしまいます。つまり、オゾンは殺菌の働きをした後には消えてなくなってしまうというわけです*1。

*酸化:金属が錆びる現象が酸化の一種です。酸化によって体の中が錆びることが老化や病気の原因とされています。

機器としては「オゾン発生器」がある。

オゾン層とは

オゾンというとオゾン層のことを思いつきますが、これは地表から10-50kmの上空にオゾンガスが高濃度で存在する雲のような層で、生物にとって危険な紫外線をカットして地上に降り注ぐ量を減らしてくれています*2。

オゾンの入手方法

気体のオゾンはオゾン生成器で作ることができ、10,000円以下の小型のものから数十万円する業務用のものまで多くの製品が販売されています*3, *4。

オゾン水

オゾン水とは

オゾン水とはオゾンを水に溶かしこんだもので、強い殺菌力を持っています。家庭用のオゾン水はオゾン水生成器を使って作るのが一般的です。オゾン水生成器は、発生するオゾンの量によって色々の製品が販売されていて、気体のオゾンとオゾン水の両方を作れる製品もあります*5。
より詳しくは神戸オゾンの「オゾン水とは」をご覧下さい。

オゾン水の利用

オゾン水は、主に殺菌・除菌と脱臭目的で使われます。利用範囲は、生鮮食品や野菜などの食品の除菌用、医療・美容用、農業・畜産業用、漁業用などのほか、家庭でのシンク周り、風呂場、トイレ、ソファーなどの除菌・消臭用、さらには、ゴミや排水溝の殺菌・除菌・脱臭などです*6。

オゾン水の力

オゾン水の殺菌効果について、病院でのオゾン水による手指の洗浄効果を調べたデータでは、4ppm**のオゾン濃度で15~30秒間処理すると、ほぼ全ての細菌類が死滅し、完全な殺菌効果が得られることが示されました*7。

**1ppmは、500mlのペットボトルの水に食塩を0.5mg(塩5粒ほど)を入れた時の濃度を表す非常に小さな単位です。

オゾン水と医療・健康

歯科領域での利用

歯科領域での利用
歯科領域での利用

オゾン水の殺菌効果は、歯周病の原因菌に対して極めて強い抗菌作用を示し、食べ物の残りかすが集まっている歯垢部分の細菌に対しても抗菌作用を示すデータがあります*8。

このため、オゾン水は、うがいによる口中の殺菌作用による歯周病、口内炎、口臭対策に使われます。

眼科領域での利用

白内障手術に際して、ポピドンヨード液がよく使われますが、これは副作用が強く、ウイルスに効果がないなどの問題があります。

花崎は、オゾン水を白内障手術時の洗顔消毒用に使った結果、ポピドンヨード液を使った場合には処置後に若干の細菌残存があったのに対して、オゾン水処置後には細菌の残存は全く認められなかったとしています。また、処置後の角膜障害の発生もオゾン水処置の方が少ないものでした*9。

さらに、手洗いや洗顔に使うと風邪やインフルエンザの予防にも有効で、医療機関では、オゾン水を、感染症予防のために手洗いだけでなく、傷口、医療用器具、床などの殺菌用に広く用いられています。火傷、水虫、痔の場合の患部の洗浄にも利用可能です*10。

皮膚科領域での利用

近年急増している大人のアトピー性皮膚炎(成人型アトピー性皮膚炎)の原因として、ダニやペットの体毛があります。長野は、ダニの駆除のためにオゾンを用いた実験を行いました。一定濃度の気体のオゾン(0.5ppm)を1日6~8時間、2~4週間室内噴霧したところ、オゾン噴霧開始後4日目にダニの数が初めの1/10に減り、成人型アトピー性皮膚炎の症状も大きく改善することが明らかになりました*11。

また、オゾン水による、皮膚の一番外側の表皮に巣食う皮膚炎などの原因菌の殺菌効果から、ニキビなどの異物の解消などに役立ち、スキンケアにも有効です。さらに、オゾンが表皮の繊維芽細胞を刺激し活性化することにより、肌の健康を保つのに重要なコラーゲン、ヒアルロン酸との生成が促進されるとも言われています。

オゾン水には高い殺菌効果がありますが飲用するものではありません。従って、肌に外から反応させて、その殺菌力をアトピー性皮膚炎治療やスキンケアに利用することが試みられています*12。

オゾンの安全性

オゾンが強い殺菌効果を持つということは、オゾンの持つ危険性と裏腹の現象です。すなわち、オゾンガスを大量に吸い込むと危険だということです。では、オゾン水ならば安全かというとそうでもありません。オゾン水中に含まれるオゾンは、一定時間が経つとに空気中に放出されるため、こちらにも気を付ける必要があります。

オゾン濃度0.1ppm(1Lの水にオゾン0.1mg)以上で匂いや刺激を感じ始め、1ppm以上で人体に危険が及びます*13。このようなオゾン濃度になることは、日常生活の中ではほとんどありませんが、オゾン水を使う必要がある時には、注意するに越したことはありません。

オゾンの良い点・悪い点

オゾンの良い点

オゾン層破壊が地球環境悪化の原因だとすると、オゾン層、いやオゾンは人にとって大切なものということになります。そうです。オゾン層があることによって、地球上の全ての生物は、日光の中の危険な紫外線の影響を免れているのです。もしも、オゾン層がなかったら、現在の生物の繁栄はなかったことでしょう。

また、オゾンやオゾン水は、医療を始めとした幅広い所で私たちの役に立っています。

オゾンの悪い点(注意点)

オゾンが怖いものという概念は、濃い濃度のオゾンが生物にとって危険という事実からくるものです。でも、人に危害を加えるほど高濃度のオゾンを吸い込む危険性は、通常の生活の中ではありえませんから、ご安心ください。

オゾンを取り扱う場合には、もちろん、十分注意が必要なことは言うまでもありません。

オゾン水には高い殺菌効果がありますが飲用した時の効果については明らかになっていません。従って、飲用は避けて、肌に外から反応させることです。

オゾン水効果を得るためには、オゾン発生器で発生させたオゾンを家庭の風呂に溶かし込んだオゾン風呂があります。この風呂に入ることで、肌がすべすべになる、あるいは、血行が良くなるなどに加えて、汗も、ニキビ、水虫を始めとした皮膚疾患やアトピー性皮膚炎にも効果があるとされています。

ただし、オゾンは微量でも吸い込むと危険な気体です。従って、オゾン風呂に入るときは、風呂に溶け込みきらなかったオゾンが部屋に拡散するため、十分な換気が必要です。

まとめ

オゾンは雲の上にあるだけでなく、私たちの身近な所にもあって、色々と役に立っていてくれていたのですね。今後、研究が進んで、オゾンの働きがより詳しく分かってくるにつれて、その産業面での役割は、もっともっと重要なものになると思われます。

その一方で、オゾン層破壊の環境問題についても、全世界で一丸となって対処していかなくてはならない重要な課題です。

参考記事
*1 https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/topic/13.html
*2 https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-10ozone.html
*3https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E3%82%AA%E3%82%BE%E3% 83%B3+%E7%99%BA%E7%94%9F%E5%99%A8/
*4https://www.ipros.jp/cg2/%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3%E7%99%
BA%E7%94%9F%E8%A3%85%E7%BD%AE/
*5 https://www.ozon-uv.com/ozon-water/ozon-water.htm
*6 西村喜之ら、日本食品工学会誌、2-3, 2001.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/2/3/2_3_103/_pdf/-char/ja
*7 赤堀幸男ら、日集中医誌、7, 2000.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm1994/7/1/7_1_3/_pdf
*8 辻上弘、日本歯周病学会会誌、44-1, 2002.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio1968/44/1/44_1_46/_article/-
char/ja/
*9 花崎秀敏、日本医療・環境オゾン研究会会報、10-4, 2003.
http://www.js-mhu-ozone.com/report-review/pdf/g3/gp003-008.pdf
*10 環境分野におけるオゾン水の利用指針―基礎編、日本医療・環境オゾン学会 環境応用部会/オゾン水研究会製作、2015.
http://www.js-mhu-ozone.com/riyou/image/2013-009/2018-
114_riyoukiso.pdf
*11 長野拓三、オゾン発生器による顔面紅皮症型アトピー性皮膚炎の治療成績について、
1995.
http://www.teco.co.jp/pdf/atopy.pdf
*12 https://bhn.jp/keyword/42490
*13 https://www.ecodesign-labo.jp/ozone/info/6-1.php