香水だけではなく、消臭剤や芳香剤、柔軟剤など、好きな香りは疲れた心を癒し、気分を高め、今を生きる活力となるもの。しかし香りに含まれる化学物質により、化学物質過敏症という健康被害に苦しめられている人がいる。化学物質過敏症は、周囲に理解されにくく、単なる香りの好き嫌いだと片づけられてしまいがちである。化学物質過敏症に悩む当事者でさえ、健康被害が生じる原因や対策が分からず、辛い思いをしていることも少なくない。そこで今回は、周囲の臭い(外的要因)により体調不良になっている人が化学物質過敏症という症状にたどり着いた方や、化学物質過敏症の原因や対策を知りたいと考えている人に向けて書きたいと思う。

化学物質過敏症

まず化学物質過敏症について知らない人もいると思うため、化学物質過敏症について簡単にまとめる。

化学物質過敏症とは

化学物質過敏症とは、香りに含まれる化学物質に身体が反応して健康被害が生じる病気のことでである。発症してしまうと、たとえ微量の化学物質であっても、様々な体調不良を引き起こす。
また、化学物質過敏症は突然発症することがある。化学物質を浴び続けたことにより、ある日許容量を超えてしまい発症してしまう。一度でも発症すると、次々と他の化学物質にも身体が過剰に反応するようになる。症状が悪化して外出すら困難になる人もいるほど、深刻な問題と言える。
調査によると、化学物質過敏症の発症者は全国で約70万人にのぼる。皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思うが、シックハウス症候群も化学物質過敏症のひとつだと言われている。

身体が反応するという点では、化学物質過敏症はアレルギーと似ているかもしれない。しかし、化学物質過敏症とアレルギーは仕組みが異なる。アレルギーは身体を守るための免疫反応が過剰に働いたことで症状が現れるが、化学物質過敏症は自律神経系の症状のため、血液検査をしても異常が出にくい。女性は、更年期障害と診断されることも少なくない。

化学物質過敏症の原因

なぜ香りによって健康被害が生じるのかという原因は判明していない。
化学物質過敏症を発症する引き金となりうるのは、香水や柔軟剤、芳香剤といったものから、タバコの臭いまで様々。人によって症状が現れる原因となる物質が違うため、身体が拒絶しているものを断定することは難しい。

化学物質過敏症の症状

化学物質過敏症の症状は頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、肩こり、倦怠感、不眠、呼吸困難など、人によって異なる。柔軟剤を使用していたことが原因で、湿疹が出るケースもある。
このように、化学物質過敏症は特定の箇所ではなく、全身症状として身体の至る所に現れます。

化学物質過敏症の対策

化学物質過敏症の原因や症状が人によって異なるように、対策もそれぞれ異なる。残念ながら、化学物質過敏症が瞬時に治る魔法のような対策はないのが現状だが、症状を軽くする方法はある。いくつか試し、自分に合った方法を見つけるのが最適かと思われる。

空気の入れ替えを徹底する

窓を開けたり、換気扇や空気清浄器を使うなどして、空気中に含まれる化学物質を排除する。ただし、近隣の住人が使用する柔軟剤の香りによって健康被害が生じる場合もあるので個々の状況に応じて試してみる必要がある。
換気以外にも、備長炭もおすすめできるだろう。備長炭は脱臭だけではなく、化学物質を吸着する効果が期待できるからである。定期的に交換をしながら使用することをおすすめする。

適度な運動をして汗をかく

適度な運動をして、汗をかくことをおすすめする。化学物質は体内に蓄積されてしまうが、汗をかくと排出されやすくなる。サウナで汗をかくのも、化学物質を排出するための有効な手段であるといえる。また、適度な運動は自律神経を整える効果もあるため、日常的に身体を動かすようにすべきである。

オゾン発生器

化学物質過敏症に悩んでいるのであれば、オゾン発生器を使用するのも方法のひとつである。
オゾン発生器は強力な除菌・消臭効果があるため、多くの企業で使用されている。企業で使用されているのは業務用だが、近年では家庭用のオゾン発生器も多く販売されている。
しかし、オゾン発生器は必ずしも安全とは言えず、危険な一面もある。日本産業衛生学会によるとオゾンの許容濃度は0.1ppm。濃度が濃くなるほど、身体に害となるため、少なからずオゾンの特性を理解したうえで安全に使用する必要があるだろう。

企業で使用する業務用のオゾン発生器のオゾンはオゾン発生量も多量なため、室内空間のオゾン濃度も高くなり、人やペットがいない無人環境下で使用するものである。人やペットがいる環境下で業務用のオゾン発生器を使用してしまうと、濃度が高すぎて大変危険である。また、家庭用と謳っていても中には許容濃度を超すオゾン発生器も販売されているため、購入するときはメーカーの注意喚起によく目を通すなどして、信頼できるメーカーや製品を自己責任で選ぶ必要がある。

このように、危険な面もあるオゾンだが、エアコンや冷蔵庫、空気清浄器などにも使われていて実は身近なものでもある。使用方法に気をつければ高い消臭・脱臭効果が期待できるので、検討してみるといいだろう。

周囲に理解を求める

香りによる健康被害について、周囲に理解を求めるべきだろう。化学物質過敏症の当事者だけでは、対策に限界がある。室内を清潔に保ち、換気や空気清浄器を使って空気中に含まれる化学物質を排除しても、来客者や近所の人たちが使用する香り製品や勤務先での香害に悩まされる人が多いことが分かっている。
化学物質過敏症の全てを理解してもらうのは難しいかもしれないが、香りによる健康被害について伝えることも必要である。

専門病院に相談する

化学物質過敏症の症状がひどければ、専門病院に相談することをおすすめする。残念ながら令和元年現在、特効薬はないが、症状を軽減させたり、専門医からのアドバイスによって日常生活で生じる負担を軽減させることができる。
一人で悩まず、1度受診してみてはいかがでしょうか。

まとめ

化学物質過敏症とは、香りに含まれる化学物質に対し身体が拒絶反応を示し、全身に様々な症状が現れる病気ことである。現段階では、明確な原因や仕組みは判明しておらず、柔軟剤や芳香剤、タバコの臭いなど人によって拒絶反応を示すものは異なる。
症状を軽くするためには、換気をして空気中に含まれる化学物質を排除すること、汗をかいて排出すること。オゾン発生器を使用するなどの方法がある。もし症状が重いようであれば、専門病院を受診することをおすすめする。今の世の中には香りが強調される製品が溢れている。残念ながら化学物質過敏症は、現状ではあまり認知されていないので、周囲から理解されにくい病気であるといえるだろう。香りで癒し効果を得る人がいる反面、香りが香害として様々な症状に苦しめられている人がいることを理解しなければならない。

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